９４４系エアコンについて

［レトロフィットについて］

製造中止になったR12にかわりR134aのエアコンガスを使うための改造をエアコンレトロフィットといいますが、ポルシェの場合最低限の部品交換 で済みます。
1. ドライヤー（リキッドタンク。中に乾燥剤がはいっている、ラインから水分を取り除くもので、消耗品ですのでエアコンをいじるときには常に交換が奨励されて います）
2. ドライヤーのコネクター部シール
3. ガス補充用の、高圧、低圧バルブ（ガスの種類によって形が違うので、R134a用のものに交換します*
あとは、ガスやオイルなどで他の部分はすべて交換の必要はありません。
*ここの部分が日米モデルで異なっていました。日本のものは片方がL字形のバルブですが、USモデルはともに直管型です。オーダーするときは形状をご確認 ください。
当然ながら、ラインごと交換する場合は必要ありません。

が......
エアコンがちゃんと動いているのにレトロフィットする人はいないですから結局は漏れだしたときに交換になりますよね。
したがって、その部分を直す必要があります。特に、新車時についていたシール類はR12でも漏れやすく、保証期間に続発したエクスパンジョンバルブ交換は ほとんどシールが問題だったそうで、現在ではすべて999品番のシールになっています。分解する必要があるならば、交換しておけば安心ですね。シールは大 きさにより100円から770円です。

[944エアコン修理記顛末]
90年の納車後ちょっと冷えが悪い気がして自分で補充（総経費10ドルかからなかった）あと7年問題なく動いてきたエアコンだが、98年に 冷えなくなって看板が出ていたスタンドで２缶追加、その後３年後にまた冷えなくなり追加したがこんどは１年しか持たなかった。修理は10万以上かかること から、オートバックスの代替フロンが2000円ほどで補充できるので、そのまま必要なときに補充して使おうと思ったら、ついに今年になってコンプレッサー が動いていないなどといわれて（そんなことはないのだが）補充拒否。しょうがないので、修理とついでにレトロフィットをすることにした。

（03年6月）ユウキさんのサイトにレトロフィットの値段が出ていて、944だと7万円ほど。そこでアメリカから安く買えるパーツは輸入して当初予算10 万円ほどで修理を決意。ディーラーの丸善に夏前におねがいします、と連絡をしていたら急遽ポルシェを扱わなくなったとの連絡。当時は次にディーラーができ るという情報もなかったので、市内の電装店に頼むことにした。

（03年9月）市内にデンソー代理店があり、ここだと後々補充も可能ということで、まずパーツ調達を開始。ドライヤー（リキッドタンク）はすでにZims から購入済みだったので、後必要なものはシールとバルブ（R12と口金の形状が違う）2コだけだったので、いつもの大阪のディーラーに注文。ところが、こ ちらも経営が変わってメールが届かなかったらしく、FAXを送り直した10月になってやっと連絡がつく。

（10月6日）ポルシェセンター名古屋のサイトに載っていたパーツ番号を元に、注文。ほどなくパーツが送られてきた。ところがよく見てみると、送られてき たバルブはL字形、確かついていたバルブはどちらもLでなく水平（コネクタが180度の角度になっているもの）のはず。あわてて請求書をみてみると5日以 内は返品交換可能、ということなので、とりあえず交換した旨電話で連絡しておく。

（10月14日）なんとなくテクニカルブレティン（アメリカのディーラー宛に出されるパーツに関するお知らせをまとめたもの）をみていると、何と944の エアコンレトロフィットについての詳細が載っていた。最初から確認すればよかった！（というか載っていたのを忘れていた）。それによるとUSAモデルの R134a用バルブは928.573.965.00と928.573.965.01、どちらもストレートなもので、各5100円。日本の944はどちらも L字形で末尾が02と03（ともに6000円だった）。そこで、自分の車は00と01のようだと電話したら快く交換に応じていただいた。たまたまその週京 都出張があったので、ついでに取りに行くことにした。

（10月18日）ひさしぶりに阪神電車に乗ってディーラーにおじゃま。ついでにエキバン周りのシールも買っておく。径によって80円770円とずいぶん違 う。

（10月末）ついでにGPRから買ったエキバンをもって、デンソーに行く。平日だけ営業なのがちょっと大変。

（１週間後）電話があり、チェックしたところコンプレッサー、エバポからの２本の長いホース、コンプレッサーからドライヤーのホースから漏れているといわ れ、パーツ集めに奔走。幸いコンプレッサーはリビルトを探してもらえそうで、お願い（これが後で大変なことに）

（11月初め）ディーラーに問い合わせたところ、１つは在庫あり、１つは国内在庫、１つはドイツ発注だった。在庫があったのが海外のものに比べて高かった ので、国内在庫があるラインだけを頼んで、それ以外はPelicanにオーダー

（１週間後）ディーラーからパーツ到着。羽のように軽いパーツだが、形状が複雑で箱が大きく、送料が結構かかった。ペリカンの方はフレキシブルな部分を折 り曲げてあったので、比較的小さな箱。でもアメリカからの送料は箱の大きさはほとんど関係ない（最大リミットはあるが）。アメリカの方が安かったパーツは USA Madeだったが、日本にないラインの方はきっちり純正品だった（値段も日本と同じです）

注文したラインすべて

このホースだけはUSA製

日本にストックがあったもの 値上げ前の値段になってました

Pelicanのパーツも純正品

（11月末）さあこれで大丈夫かと、ラインを持っていって、しかし何かが起こるような気がしていたら、エバポ周りのコネクタが合わないとの電話。エバポの 出入り口のうち一方はでき版に直接つながり、そのあと10cmぐらいのパイプでエンジン隔壁につながりその反対側から長いパイプでドライヤーにつながる。 もう一方はエバポから直接短いパイプが出ていて同じところでコンプレッサーへの長いパイプに接続。その両方のコネクタが合わないらしい。メカニックの人 は、そのパーツが違う年式のものではないかと疑っていたらしいが、PETでも944にはそのパーツは１種類しかなく対応に困る。とりあえず、自分の車が初 期型のため、PETにも載っていない特殊なコネクタを使っていて、それ以降今の形のものに変更になったと予想をして、そのラインとエバポを注文。その日の 夕方に、ひょっとすると加工できるかもしれない、と電話があったので、Pelicanで短いラインがバックオーダーだったので、そのまま取り置いてもらう ようにメール。

合わなかった口金

古い方の口金

場所はこのあたり

（12月9日）その後しばらく連絡がないので、きっとコネクタの改造がうまくいったと解釈し、Pelicanのエバポとラインをキャンセルしてもらおうと メール。ところがオーダーステイタスをみてみると、バックオーダーのパーツが届いてすでにPackedになっていた！不安な一夜を過ごす。

（12月10日）Pelicanからメール。すでに送られた後なので、送り返したら返品は15％のリストックフィーを引いて返金、とのこと。パーツ余る。 （Pelican価格の１割引で大売り出し中）

（12月11日）デンソーサービスに、エバポとラインが今海の上をとんでいるので、必要であればちょっと待ってください、と連絡しようとしたら、すでに 直ったとのこと。つくづく間が悪い。

（12月12日）珍しく会議が多い日の合間を縫って、引き取り。値段を聞いてびっくり20万とちょっと。明細をみてみると、工賃は当初の予想通り10万円 足らず。いろいろ無理を言った割には良心的です（ポルシェについては初めてだったので、リペアマニュアルとパーツリストのコピーは渡したけど）。ところが リビルトコンプレッサーが97000円！！定価は何と20万５千円。リビルトだから修理工賃だけかかるはずなのだが、新品価格を元に値段が決まっているら しい。古いコンプレッサーは捨てられたのかな？？デンソーのコンプレッサーは正規代理店でリビルトしたものしか認めていないらしく、それもあって高かった のでしょう。ユウキさんのサイトにはリビルト安い、とかいてあるので正規代理店以外を通じると作業工賃だけで安く済みそうです。これだったらサンデンの新 品をアメリカから買った方が安い（でもさらなる問題が発生する可能性もあり）。ちなみにコネクタの問題は、古いラインの先を切断、新しいラインのコネクタ とすげかえて溶接したそうです。結構大きく違っていたのね（初期型の方、OKパーツありまっせ、安いですよ ←しつこい）

外から見えるところはここだけ

溶接の跡があります

（まとめ）そういうわけで総計30万円ほどの大騒ぎになりました。教訓は
1. リキッドタンクとコンプレッサーからリキタンへのライン以外は世界中どこで買っても値段が変わらないので、結局全部ディーラー任せがおすすめ。
2. コンプレッサーを交換する場合はリビルトでも値段を聞いておく。なんでも埼玉にリビルトしてくれる工場があるらしくて、そこにまかせればせいぜい3,4万 だと思います（不確定情報）
3. 私の場合ディーラーが存在しなかったので選択の余地はなかったが、日本仕様ならパーツが合わなければ探してくれると思うのでやはりディーラーがおすすめ。 USA仕様だと、今回みたいにコネクタが合わなかったりすると直せないといわれるかもしれません。

［パーツ番号まとめ：すべてUSAモデルです］

• 85年までの前期は85以降の後期型とは100％異なる。一部944品番のものもあるが、ドライヤー以外すべて別物。
• 85年式以降はしばしばバージョンアップがあるが、年式による違いはほとんどなく、85年と91年の違いはコンプレッサーからエバポレーター のホースと、ドライヤーからコンデンサーのホースのみ。これらは、低圧、高圧バルブの位置が変更になっただけで、バルブの位置を気にしなければ互換であ る。
• 968は92年までと93年以降ですべてのパーツが異なる。92年まではドライヤーまわりのホース以外944S2と共通。

［パーツ番号の変遷：最後が最新バージョン］注：こ れはあくまで参考データです。パーツ注文の際にはディーラーまたは販売店にご確認ください。

	944 （85）	944（85L）	944S2（91）	968（-92）	968（93-）
エクスパンジョンバルブ	477.820.909	944.573.201.00	944.573.201.00	944.573.201.00	944.573.201.01
コンプレッサー	944.126.007.02	944.126.008.00	944.126.008.00	944.126.008.00	944.126.008.01
コンデンサー	944.573.011.01	944.573.011.03	944.573.011.03	944.573.011.03	944.573.011.05
エバポレーター	477.820.903	944.573.211.00 →944.573.211.01	944.573.211.01	944.573.211.01	944.573.211.02
ドライヤー	944.573.143.00 →944.573.943.00	944.573.143.00 →944.573.943.00	944.573.143.00 →944.573.943.00	944.573.143.00 →944.573.943.00	944.573.143.00 →944.573.943.00
ライン：エバポ-ドライ	944.573.093.01 →944.573.093.07	944.573.093.03 →944.573.093.04 →944.573.093.05	944.573.093.05	944.573.093.08	944.573.093.10
ライン：ドライ-コンデ	944.573.095.01 →944.573.095.07	944.573.095.03 →944.573.095.08 →944.573.095.09	944.573.095.10	944.573.095.12	944.573.095.13
ライン：コンデ-コンプ	944.573.097.01	944.573.197.08 →944.573.197.09 →944.573.197.11	944.573.197.08 →944.573.197.09 →944.573.197.11	944.573.197.11	944.573.197.11
ライン：コンプ-エバポ	944.573.091.01	944.573.091.03 →951.573.091.01 →951.573.091.02	944.573.091.05 →951.573.091.07 →951.573.091.08	951.573.091.07 →951.573.091.08	951.573.091.07 →951.573.091.08